イランという国で
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ハンマームとイラン音楽
2007年 08月 09日 |
 古い写真を整理していて見つけた懐かしい写真です。

 シーラーズのワキールのハンマーム(浴場)です。
 恐らく1994年か1995年に撮ったもので、管理人もいなければ手入れもほとんどされていなくて、歴史的な建造物だろうにもったいないと思ったことを覚えています。
 それが現在はすっかりきれいに修理がされて、イラン音楽の生演奏が楽しめるレストランとして観光客でにぎわっています。この写真の頃には訪れる人もいなくて、がらんとした空間が広がっていただけでしたが。

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 イラン各地には、こうしたハンマームが沢山残されています。
 内風呂が普及した今日では、古くからの生活スタイルが残っている農村部を除けば、ハンマームはほとんどが使われなくなってしまいました。
 使われなくなったハンマームは、取り壊されてしまったものもありますが、多くは放置され、漆喰が落ちたり、天井に穴が開いたり、朽ちるに任せられています。

 ところが、この数年、ハンマームを改修して、チャイハーネやレストランとして利用することが流行しています。

 そのこと自体は決して悪いことではないと思います。

 ただ、少し残念に思う部分があるのも事実です。
 もう少し、ハンマーム文化をきちんと伝えるための場所として活用できないのかな、と思う部分もあるのです。
 いくつかの歴史的に有名なハンマームは、ハンマーム文化を伝えるために博物館として残されていますが、それも十分なものではなく、ハンマームのそれぞれの部屋がどのような役割を持っていたのか、人々がハンマームをどのように使っていたのかということが分かりやすく伝わっては来ません。なんか、細かい部屋が沢山あるなあ、で終わってしまうのです。

 もう一つ残念なことが、普通にチャイハーネやレストランになっているのならそれもまた一つのやり方かな、と思うのですが、ここに「伝統音楽の生演奏付き」とすることはやめて欲しいなあと思うのです。もちろんこれは、ハンマーム改装に限らず、普通のレストランなどでも同じなのですが。
 イランの伝統音楽は繊細で緻密な、非常にすばらしいものだと思います。
 しかし、「伝統音楽の生演奏付きレストラン(あるいはチャイハーネ)」では、アンプを使い、隣の人の声さえ聞こえないくらいの音量で「これでもか」というくらいに音楽を押しつけてきます。それも、アンプの品質が悪いため、音は割れ、音響の悪い室内でわんわんと響き渡ります。それに加えて、演奏者たちも腕がそれほど良いというわけではないことも多く、他の奏者と合わせようというよりは、「自分が自分が」という演奏をするため、聞いていて苦痛になることもしばしばです。ここに歌手が入ると最悪です。自分に注目し、手拍子、拍手をすることを強要され、食事や雰囲気を楽しむどころではなくなってしまいます。そのくせ、料金だけは高いのですからちょっと考えてしまいます。

 昔、まだ日本で大学生だった頃、何という雑誌だったか忘れてしまいましたが、中東・中央アジアの伝統音楽について書かれた記事の中に「かそけく~」という言葉がありました。
 「幽し(かそけし)」とは国語事典によると、光・色や音などがかすかで、今にも消えそうなさまを表す古語だそうですが、この地方の音楽を表すのにふさわしいような気がしてとても印象深く、心に残りました。

 実際、イラン(中東・中央アジア全体に言えることですが)の楽器、特に弦楽器は、決して力強い大音量を出すものではありません。これはあくまで個人的な感想なのですが、それほど大きくない部屋で、演奏する人との適度な距離の中で聞くものだという感じがするのです。

 ですから、音楽なら音楽だけ、食事なら食事だけをそれぞれ楽しんだ方が良いのでは?と思うのです。レストランでは質の高い演奏のテープなどを適度なボリュームで流しておいてくれれば十分なのでは?と。。隣の人と話すこともできない音量というのはちょっと食事の場としてふさわしくないと思うのです。美しい音楽が美しく聞こえないというのは音楽に対して失礼だという気もします。

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 先日、アゼルバイジャン地方を訪れたときにも修復中のハンマームがありました。修復に関する責任者に「修理が終わった後はどうするの?まさかチャイハーネやレストランにするの?」と聞いたところ、「それはない」と聞き、「それがいいわ」と思わず力強く賛成してしまいました。
 ハンマームとイラン音楽。
 どちらも大切に残して欲しいなあと思うのです。
 (上の写真はマラーゲで現在修復中のハンマーム。チャイハーネやレストランにする予定はないとのこと)

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by sarasayajp | 2007-08-09 20:44 | いろいろ |
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