イランという国で
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地震のこと
2005年 12月 01日 |
 イランでは、私がテヘランに住むようになってから、バムをはじめ、ザランド、ラズン、そして今回のゲシュムと、多数の死傷者が出る地震が何度か起こっています。
 これらの地震の中でいくつかの町や村が壊滅的な被害に遭っているわけですが、テレビや新聞の映像から、あるいは自分自身が現場へ行ってその様子を見るたびに何とも言えない気分になります。

 イランや他国の地震の報道を見て、被害にあった人たちに心からの同情は示すものの、ある意味では全く人ごとで、ある日自分も同じように地震の被害者になるかもしれないという意識は意外と薄いような気がします。
 新たに家を買う人や借りる人に聞いても、耐震建築であるかどうかよりもデザインと値段の方が重要だという人がまだ多くいます。その理由を聞くと、「テヘランには地震は来ないから」だそうです。
 日本で関西の人が同じように考えていたことは、関西出身の友人たちの話から聞いていましたが、実際には阪神淡路大震災というそこに住む人たちにとっては全く想定外の地震により大きな被害を出したことは、一人の日本人としてまだ記憶に残っています。

 私が周囲の人にそれを言っても、「日本は地震国だから」と言ってなかなか相手にしてもらえません。どうしてそんなに簡単にイランだけが例外だと考えられるのか、そちらの方が私には分かりません。彼らには、私がどうして地震をそんなに怖がるのかが分からないのでしょうが。

 実際、テヘランの地下には何本かの断層が眠っていることは調査で明らかになっていますし、その中でも大きな一本は、人口密集地帯でもあるバーザール地区の下を通っています。もしこの断層が、平日の日中に動いたらとんでもないことになります。経済と行政の中心がその一帯に集まっているのですから。

 もちろん、テヘランの人たちをはじめとするイランの人々に地震に対する意識が低いのは、彼ら自身の責任ではなく、教育を怠っていた行政の責任でもあるのだと思います。
 私がイランで体験した有感地震は二回だけです。そのうちの一回は、ハマダーンの方で大きな被害を出した地震がテヘランまで伝わったものでした。
周期の大きなゆっくりした横揺れで、「あ、揺れてる。大丈夫かなあ。テーブルの下に潜り込んだ方がいいかなあ」などとのんびり考えることができたくらいでした。しかし、近所の人たちはほとんど経験したことのない有感地震にパニックを起こしていました。大家さんは私の部屋のドアをがんがんと叩き、「早く外に出るのよ!もっと大きな地震が来るから!」と叫び、「大丈夫ですよ」という私の言葉には耳を貸さず、私を外に引っ張り出しました。
 そのまま外で夜明かしをしかねない様子に、これはたまらんと、地震が横揺れで、それも揺れ方からしてかなり震源が遠いこと、本震よりも大きな余震は来ないこと、といったことを説明して解放してもらったのでした。
 私は知らなかったのですが、その後、ラジオで私の説明と全く同じことを説明していたとのことで、「さすがに日本人は地震に慣れている」と感心されていたのだとか。つまり、彼らは知らないだけなのです。

 いくつかの大きな地震を経て、行政側も教育の重要性を感じたのか、この二年ほど、地震に関する番組が作られたり、小学校で地震の際の避難訓練が行われたりということが見られるようになりました。これが浸透してくれたらと思います。
 それからもう一つ大切なこととして、違法建築の取り締まりをしっかりして欲しいと思います。日本でも最近、建築士による偽装工作が明らかになり、大変な騒ぎになっているようですが、そんなこと、こちらではほぼ常識です。
 高層建築に関しては分かりませんが、低層の一般家屋に関しては、良心的・常識的な建築主ならともかく、市役所によるチェックの後、設計を変えてしまったり、鉄筋を抜いたり、コンクリートに砂利を混ぜて水増しをしたりということはよく行われています。
 これでは、地震が起こったら死ぬなあと思わずにいられない建築があちこちで見られます。

 いくつかの地震被災地へ行って分かったことなのですが、一応とはいえ鉄筋コンクリート造りの行政府の建築は、壁にひびが入ったりしたくらいで生き残っているのに、手抜き工事の家、あるいは古くからの煉瓦造りの家だけが崩壊しているのです。
 これを目にすると、やはり、建築関係者に対する教育と指導、監視をきちんと行わなくてはならないということを強く感じます。
 もちろん、自分たちの伝統的な家屋に住みたいという人たちの気持ちもよく分かりますし、伝統的なデザインや材料を生かした、より強い建物を造り出す努力も必要でしょうし、実際、バムの地震の後、海外の協力によりそういう方向に動きつつあることも確かなようです。

 日本とイランという地震国に住み、その怖さを実感している一日本人として、イランにおける地震対策と教育が進むことを願ってやみません。
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by sarasayajp | 2005-12-01 11:57 | いろいろ |
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