イランという国で
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ルーハーニー
2012年 03月 19日 |
 日本ではよく「イスラム聖職者」という呼ばれ方をする人々。ペルシア語ではルーハーニーと呼ばれることが多いです。以前はアーホンドとも呼んでいたのですが、最近ではなんとなく馬鹿にするニュアンスが入ってくるとのことであまり使われなくなってきているのだとか。そういえば、日本では、頭の上で指をくるくるっと回すと、頭のおかしな人という意味になりますが、イランでは頭にアンマーメ(↓これ)を巻いているルーハーニーを指すと同時に、やはり馬鹿にしたニュアンスになるようです。

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ハータミー前大統領。アンマーメが黒いのはセイエド(預言者ムハンマドの子孫)のしるし。白はそれ以外の人。


 それはともかく、このルーハーニー、日本語の「聖職者」という訳語から受けるイメージとは異なり、彼らは「神に仕える聖なる階級の人々」ではなく、「イスラーム法学・神学の専門家」であり、俗人です。
 イスラームは全ての人が神に服従することを義務としており、日常の生活全てが神によって定められた規則に則っています。神と人の間に仲介者はなく、人は全て神と直接対峙します。
 ということで、「聖職者」というのはイスラームでは本来いないはずなのです。

 とはいえ、コーランはアラビア語で書かれていますし、日々変化する社会の中で、コーランには直接書かれていない問題が生ずることもありますし、コーランの語句の判断に悩むこともあります。そうしたときにはやはりイスラーム法学に通じた人が必要、ということで登場するのがルーハーニーたちなのです。

 現在のような教育システムが整う前には、小学校に通うような年齢でマドラサ(現在のイランではホウゼイェ・エルミーエ)に入り、アラビア語やコーラン、イスラーム法学その他イスラーム関連諸学だけでなく、文学や数学等、様々な学問を10年以上かけて学びます。
 その後、どのような道に進むかは本人次第。ルーハーニーになるもよし、教師になるもよし、学者になるもよし。

 現在のイランでは小学校は義務教育となっているため、小学校を卒業した後にホウゼイェ・エルミーエ入りする人が多いようです。以前は男性のみでしたが、現在は女性もここで学ぶことができます。
 もともと、マドラサは統一カリキュラムがあるわけではなく、学校によって、あるいはそこで教える教師によって内容は少しずつ異なっていたようです。そのため、学問を志す若者は、著名な教師の許で学ぶため、イスラーム世界各地のマドラサを渡り歩いたものでした。
 イランでは、革命後、「ヴェラーヤテ・ファギー(イスラーム法学者による統治)」の理念を実現するため、政府の主導でホウゼイェ・エルミーエの国営化が進みました。その際、国による管理はホウゼイェ・エルミーエの精神には合わないからと、国営化を拒み、私立のして残ったホウゼイェ・エルミーエもあります。ともかく、革命後、定められた教科書とカリキュラムに従ってルーハーニーを養成する、現在のホウゼイェ・エルミーエが生まれました。この際、女性にも門戸を開こうということで、多くのホウゼイェ・エルミーエが女子部を設置しました。ただ、女性はルーハーニーにはなれないので、卒業後の進路としては、コーランやイスラーム関連の先生や、宗教的な集会での説教師となる人が多いようです。

 この新しいホウゼイェ・エルミーエ、私立学校の教師達には、「以前に比べると内容が薄くなっている。教科書なんて、何分の一かしかない」と嘆かれていますが、それでも、大学よりもずっと長い期間勉強し続けなくてはいけない大変なコースです。しかし、これは以前からの伝統を引き継ぎ、無料で高いレベルの教育を受けることができることから、それなりに人気があるようです。終了後は、大学卒業と同じ学位と、ホッジャトル・エスラームと呼ばれる、ルーハーニーとしての最初の肩書きを得て、活動することができるようになります。

 面白いのが、このルーハーニー達の中には、一般の大学の修士課程や博士課程に進学する人がいるということです。進学先は、神学部や社会学部などが多いようですが、何というか、微妙に不思議な感じです。先日お話しした学位に関心があるというのも一因かもしれませんが、彼らの自分たちの知らないことを知りたいという知識欲はあちこちで感じます。現役の世俗の学生さんたちよりもずっと、学問的知識欲はあるように思います。

 先日の選挙の結果、ハーメネイー派と呼ばれる保守強硬派が議会の主流になったと報道されていたようですが、このいわゆる保守強硬派、もちろんルーハーニーもメンバーに加わっていますが、かなりの割合のルーハーニーは現実派だという意見もあります。
 イランのイデオロギーは、実はいわゆる世俗の人々によって作られているのかもなあと、先日の役所回りや大学でのあれこれから、ちょっと感じた次第なのでした。
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by sarasayajp | 2012-03-19 01:52 | いろいろ |
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